阿武隈高地
阿武隈高地 | |
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所在地 | 宮城県・福島県・茨城県 |
位置 | 北緯37度06分20秒 東経140度40分08秒 / 北緯37.10556度 東経140.66889度 |
最高峰 | 大滝根山(1,193 m) |
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阿武隈高地(あぶくまこうち)は、宮城県南部から茨城県北部にかけて広がっている高地で、大部分が福島県に属している。阿武隈山地(あぶくまさんち)とも呼ばれる。
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a0/AbukumaKohchiViewFromIshikawa.jpg/300px-AbukumaKohchiViewFromIshikawa.jpg)
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8e/AbukumaSanchi.jpg/300px-AbukumaSanchi.jpg)
地勢
宮城県南部の阿武隈川右岸山地(亘理町と岩沼市の境)を北端、茨城県北部の久慈川左岸山地(日立市と東海村の境)を南端として南北170 km以上[1]にわたって連なる山地である。その大部分が福島県に属し、おおむね阿武隈川を中心とする盆地である中通り地方と、太平洋沿岸部である浜通り地方との境界線となっている。阿武隈川・久慈川・太平洋に囲まれた紡錘形をした比較的なだらかな山地である。
山容は隆起準平原で北上山地と同様に高地部は全体的に比較的なだらかな地形が続く。阿武隈高地は海底で堆積した大変古い地層が隆起して陸地となり、はじめは日本アルプスのような大山脈だったと考えられるが、その後の長年の浸食作用で老年期のなだらかな地形となり、さらに隆起が進み隆起準平原となったと考えられる。阿武隈高地には侵食による残丘である硬い地質の独立峰が各所に残る。阿武隈高地中央部から西部のなだらかな山容とは対照的に阿武隈高地東部は、更なる隆起と再侵食により深い渓谷を刻む川も多く、阿武隈高地を西から東に抜ける道路の多くは、隆起した高地東部の「畑川断層」・「双葉断層」など断層による断崖状の壁面の急勾配を下っていく[2]。阿武隈高地がかつて海底にあったことを物語るものに、田村市滝根のあぶくま洞などの鍾乳洞、いわき市大久町のアンモナイト、フタバスズキリュウなどの化石産出地などがある。
阿武隈高地は活断層調査結果などより比較的安定な地盤と考えられ、また従来地震による被害の少ない地域でもある。
気候
沿岸は温暖な太平洋側気候、内陸は内陸性気候を呈しており、奥羽山脈以西より降雪量も少ない。また阿武隈山地の西側は年平均降水量も1,100 mmから1,300 mmと東北地方では少ない方である。太平洋側は阿武隈川側に比較して冬は温暖で夏は涼しいが、標高の高い地域は冬は寒さが厳しく、夏はやませの影響で冷害となることも多い[3]。
主な山
以上1000m峰
北より
- 三門山 205 m
- 四方山 274 m
- 鹿狼山 430 m
- 霊山 805 m 霊山城跡としても有名。
- 女神山 599 m
- 花塚山 918 m 富士山を撮影できる北限とされ、2016年に正式に撮影された。
- 木幡山 666 m 木幡の旗祭りで有名。
- 口太山 843 m
- 日山(天王山) 1,057 m 以前は富士山撮影の北限とされた。
- 五十人山 883 m
- 鎌倉岳(常葉)967 m
- 大鷹鳥谷山 794 m 電波時計調整用の電波塔、おおたかどや山標準電波送信所がある。
- 高柴山 884 m
- 大滝根山 1,192 m レーダー監視等の任務にあたる航空自衛隊大滝根山分屯基地がある。
- 宇津峰山 677 m 南北朝期の城跡として有名。宇津峰を参照。
- 蓬田岳 952 m 阿武隈高地では数少ない独立峰で、富士山や筑波山の眺望スポットとしても知られる。
- 二ッ箭山 709 m
- 鎌倉岳(竹貫)670 m
- 檜山 510 m
- (八溝山 1,022 m ※)
- (高笹山 922 m)
- 和尚山 804 m
- 花園山 798 m
- 竪破山 658 m
- 男体山(奥久慈男体山) 654 m
- 神峰山 598 m
- 高鈴山 623 m
- (高峰 520 m)
- (雨巻山 533 m)
- ※注--八溝山については近年「独立した八溝山系」とする見解が主流となっている。八溝山系の山は()付きで示す。
主な河川
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1f/20091107%E5%A4%8F%E4%BA%95%E5%B7%9D%E6%B8%93%E8%B0%B7.jpg/300px-20091107%E5%A4%8F%E4%BA%95%E5%B7%9D%E6%B8%93%E8%B0%B7.jpg)
阿武隈高地の河川施設
![](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/da/Sengozawa_Dam_Fukushima_prefecture_from_airplane_20090221.jpg/300px-Sengozawa_Dam_Fukushima_prefecture_from_airplane_20090221.jpg)
阿武隈水系においては、支流における河川施設が多く、阿武隈川が流れる福島県中通り地方の年平均降水量は1,500 mm(奥羽山脈側) - 1,100 mm(阿武隈川流域・盆地部) - 1,300 mm(阿武隈高地側)と少ないため、その多くは灌漑、上水道用のダムである。
河川施設一覧
用水路・導水路
用水路名 | 所在地 | 管理者 |
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西根堰 | 福島県 | - |
発電所一覧
阿武隈高地のダム画像
阿武隈高地の水力発電所画像
鍾乳洞
植生
- 日山周辺
- 日山の山頂付近を除く自然林の多くが伐採され、自然の植生群が少なくなってきているが、低地ではアカマツ林が点在する所があるほかに、日山の標高860メートル周辺には貴重なブナの自然林、イヌシデ林が残されている。(岩代観光協会ホームページより要約)
産業
工業
- 助川から夜ノ森にかけての沿岸部は、日本有数の鉱工業地帯・鉱泉地帯であり、20世紀前半には銅山や炭田が点在した。石油企業のジャパンエナジーや電機企業の日立製作所は助川が発祥地、フラガールを生み出した常磐興産は常磐湯本が発祥地である。
- 20世紀後半(高度経済成長以後)の沿岸コンビナートは、小名浜と新地に立地している。
農業
- 阿武隈高地は、全体的に牧畜が盛んである。
- 1980年ごろまでは、稲作の他に養蚕、葉たばこやコンニャクなどの工芸作物の栽培が盛んに行われたが、近年は養蚕や工芸作物は減り、稲作や野菜、花卉、果樹栽培などが増加している[7]。
林業
観光
交通
阿武隈高地は、阿武隈川流域盆地(概ね国道4号沿線)から太平洋沿岸(国道6号沿線)を直結する河川に乏しいため、富士川流域や三遠南信(天竜川流域)や濃尾(木曽三川流域)や信越(信濃川流域)のような「内陸と沿岸が山地を越えて親密」とは逆に、内陸と沿岸の交流は浅い。
水戸 - 平 - 中村 - 亘理の「沿岸同士」や、宇都宮 - 郡山 - 福島 - 白石の「内陸同士」は、交流も深く交通網も充実している。しかし、「阿武隈高地を越えた双方」を結ぶ路線は、鉄道では平と郡山を結ぶ磐越東線1本のみだが、本数は少なく複線化もされていない。同じく、中村から福島または白石を結ぶ鉄道は、計画倒れに終わっている(→阿武隈急行線)。
空港
鉄道
道路
- 磐越自動車道
- あぶくま高原道路
- 国道49号:平 - 郡山の連絡線。
- 国道113号:新地 - 白石の連絡線。
- 国道114号:近年[いつ?]まで浪江 - 福島のJRバスが運行されていた。
- 国道115号:中村 - 福島の連絡線。
- 国道118号
- 国道288号:新山 - 郡山の連絡線。戦国時代の「田村攻め」、福島原発事故での「会津へ退避」のルートとなった。
- 国道289号:勿来 - 棚倉 - 白河の連絡線。
- 国道349号:阿武隈高地を縦断する国道。
- 国道399号
- 国道459号
- 国道461号:高萩 - 大子 - 大田原の連絡線。
- 福島県道14号いわき石川線:御斉所街道(ごさいしょかいどう)と呼ばれる塩の道で、古くから浜通りの産品と中通りの産品の交易が行われた歴史ある街道。
- 茨城県道36号日立山方線:阿武隈高地の道路では、山越え距離が短い路線。
脚注
- ^ 北端と南端のおよその直線距離。
- ^ 阿武隈山地の地形・地質
- ^ 阿武隈川河川整備計画より
- ^ 早川輝雄 編著『宮城県の山』山と渓谷社〈分県登山ガイド〉、1994年10月。ISBN 4635021637。
- ^ 奥田博『福島の山ベスト50』歴史春秋出版、1987年6月。ISBN 4897571766。
- ^ 国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
- ^ 養蚕・工芸作物の衰退と阿武隈中山間地域農業の地域性変容
- ^ 国内では他に、丘陵や山岳地帯を利用した標高が高い空港として広島空港の331 m、鹿児島空港の272 m、岡山空港の246 m、種子島空港の234 m、旭川空港の220 m、能登空港の219 m、青森空港の202 m、熊本空港の196 m、高松空港185 mなどがある。
関連項目
歴史関連
その他
外部リンク
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