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アカ語

アカ語
話される国 ミャンマー, 中国, ラオス, タイ, ベトナム
民族 アカ人英語版, ハニ族
話者数 約600,000人 (2007年)
言語系統
言語コード
ISO 639-3 ahk
Glottolog akha1245[1]
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アカ語 (/àkādɔ̀/)[2]は、アカ人英語版の言語であり、中国雲南省、ミャンマー東部のシャン州、ラオス北部ベトナム、及びタイ北部で話される[3]

欧米の言語学者は、アカ語をハニ語 (哈尼語)及びホニ語英語版(豪尼語)と共にハニ諸語英語版を構成する別個の言語として分類している。これらの言語は系統的には近縁であるものの、相互理解可能性は乏しい。ハニ諸語はさらにロロ諸語の南部語群に属する。ロロ諸語はムル諸語 (Mru) と共にチベット・ビルマ語派ロロ・ビルマ語群の一部を成す。

一方、中国では、アカ語を含むハニ諸語の話者が、民族識別工作においてハニ族に分類されている。こうした背景もあり、中国語の言語学者は、アカ語をハニ語の一方言として扱っている[4]

アカ語の話者が居住しているのは山岳の遠隔地帯であり、方言連続体を成すと雖も変種間の均質性は低く、10キロメートルも離れた村同士であれば方言差が認められる[5]

分布

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西田龍雄は、1966年時点で、アカ人の居住区が以下の地域に見られると報告している[6]

Inga-Lill Hanssonは、2003年時点で、タイ・ミャンマー・ラオス・ベトナム・中国の各国におけるアカ人の人口を以下のように推計している[3]

  • タイ:約45,000人
  • ミャンマー:約200,000人
  • ラオス:約100,000人
  • ベトナム:約7,000人
  • 中国:約250,000人 (他のハニ族を除いた推計人口)

歴史

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アカ語は、シナ・チベット語族の中でもロロ諸語に属し、彝語リス語とは近縁関係にある。

伝統的に山岳地帯で焼畑農業を営み、陸稲を栽培してきたアカの人々は、中国西南部から東南アジア大陸部の各地域へと移住してきた[3][7]

タイのアカ語話者は、20世紀以降にミャンマーから移住してきた人々で、桂(1966)はタイ国内においてもタイ語を話せるアカ人が極めて少数であったと報告している[8]。桂によると、山地民同士の会話では、ラフ・ナ語に加えて、シャン語中国語雲南方言、平地のタイ人との会話では、シャン語ないし「シャン語風に変形した北タイ方言」が用いられたという[8]。Hansson (2003) は、タイに居住するアカ人に関して、上の世代ではラフ語や北タイ語、さらには中国語を話せる者も珍しくないと述べている[9]

音韻史

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アカ語では母音におけるきしみ声の有無が音韻的に対立しているが、きしみ声化はチベット・ビルマ祖語の音節末子音*-p, *-t, *-kの消失に伴って発生したものである[9]

音韻論

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「標準」アカ語の音素目録

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この節で扱うのは、Lewis (1968ab) によるアカ語の音素目録である[10][11]。Lewisの記述した「ジェゴエ」(/dʑə̀ɣø̀/) と呼ばれる変種は、他方言の話者に対しても広く通用する「標準語」[12]としての性格を備えている。

子音目録

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「標準」アカ語は26の子音音素を認めることができる。子音連結は見られない[13]

両唇音 歯茎音 歯茎硬口蓋音 軟口蓋音 声門音
口蓋化 口蓋化
鼻音 m n ŋ
破裂音 無声 p t k ʔ
有声音 b d ɡ
破擦音 無声 ts
有声 dz
摩擦音 無声 s ɕ x h
有声 z ʑ ɣ
接近音 l

母音目録

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母音音素は、音節主音/m̩/を含めると13個である。そのうち、/i, ɛ, ø, a, u, o, ɔ, ɯ, ə/の9つはきしみ声の有無が区別される[14]

前舌 中舌 後舌
非円唇 円唇 非円唇 円唇
i y ɯ u
e ø ə o
ɛ a ɑ ɔ

/ɑ/はわずかに鼻音化している[15]

その他、シャン語からの借用語二重母音/ai, ao, am/が見られる[15]

声調目録

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アカ語は声調言語であり、全ての音節が高声調・中声調・低声調のいずれかと結びついている。しかし、母音がきしみ声の場合、高声調は現れず[注釈 1]、中声調と低声調の2つが区別されるのみである[15]

声調と発声の対立 (表記はIPAによる)[9]
きしみ声
/má/「満杯」
/mā/「母」 /mā̰/「夢」
/mà/「〜でない」 /mà̰/「集団」

その他の変種

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桂(1966)[16]及びKatsura (1973)[17]はタイ北部メーチャン郡のアルー村で話されるアカ語の音韻体系を記述している。

表記

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旧来、アカの人々は文字を持たなかった[3]。20世紀以降、ラテン文字等を用いたアカ語の表記法がいくつか提案されてきたものの[18]、アカ語で読み書きできる人は極めて少ない[3]

文法

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多くのチベット・ビルマ諸語と同様に、アカ語は行為者-目的語-動詞という語順を基本とする (SOV型)[19]。また、動詞連続構文文末助詞が多用される[19]。行為者項の標示は義務的でなく、名詞句はしばしば話題化される (主題優勢言語)[19]

名詞句

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名詞句内の語順は、主要部名詞-形容詞-数詞-代名詞-類別詞である[19]。名詞句にはさらに意味役割などを標示する後置詞が付される[20]

証拠性

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アカ語の文末助詞には、証拠性ミラティビティエゴフォリシティを標示するものが見られる[21][22]。例えば、ŋáは視覚から推量される情報を表す文末助詞である[23]。また、ma、mɛ、e、aはエゴフォリシティ及び自己にとっての情報の新しさに応じて使い分けられる [24][25][注釈 2]

  • àkʰà é.「(私は) アカ人です。」(単なる言明)
  • àkʰà má ló?「(あなたは) アカ人ですか?」
  • àkʰà má.「はい、(私は) アカ人です。」(新知識)
  • àkʰà á.「(その人は) アカ人です。」(単なる言明)
  • àkʰà mɛ́ ló?「(その人は) アカ人ですか?」
  • àkʰà mɛ́.「はい、(その人は) アカ人です。」(新知識)
エゴ 非エゴ
ma
e a

上記の例では人称代名詞が明示されていないもの、一人称の平叙文と二人称の疑問文ではéかmá、三人称では平叙文・疑問文共にáかmɛ́が用いられている (エゴフォリック分布)。

関連項目

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注釈

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  1. ^ Hansson (2003: 237)による声調の記述は、3つの段位声調を認める点でLewisと一致するが、きしみ声の音節でもごく稀に高声調が現れるとしている。
  2. ^ Hansson (2003)の記述した変種には有気音と無気音の対立が認められる。

脚注

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  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Akha”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/akha1245 
  2. ^ Lewis 1968b, p. xii.
  3. ^ a b c d e Hansson 2003, p. 236.
  4. ^ 西田 1988, p. 137.
  5. ^ Katsura 1973, p. 37.
  6. ^ 西田 1966, p. 3.
  7. ^ 桂 1966, p. 122.
  8. ^ a b 桂 1966, p. 123.
  9. ^ a b c Hansson 2003, p. 237.
  10. ^ Lewis 1968a.
  11. ^ Lewis 1968b, p. viii-xii.
  12. ^ Lewis 1968b, p. vii.
  13. ^ Lewis 1968a, p. 8.
  14. ^ Lewis 1968a, pp. 10–11.
  15. ^ a b c Lewis 1968a, p. 11.
  16. ^ 桂 1966.
  17. ^ Katsura 1973.
  18. ^ Heh & Tehan 1999, p. 2.
  19. ^ a b c d Hansson 2003, p. 241.
  20. ^ Hansson 2003, p. 242.
  21. ^ Egerod 1985, pp. 102–104.
  22. ^ San Roque, Floyd & Norcliffe 2018, pp. 41–48.
  23. ^ Hansson 2003, p. 248.
  24. ^ Egerod 1985, pp. 100–101.
  25. ^ Hansson 2003, pp. 247–248.

参考文献

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  • Heh, Noel; Tehan, Thomas (1999). The current status of Akha: Notes for an oral presentation at the 12 th World Congress of Applied Linguistics (AILA): The Roles of Language in the 21 st Century: Unity and Diversity.
  • Hansson, Inga-Lill (2003). “Akha”. In Graham Thurgood and Randy J. LaPolla. The Sino-Tibetan Languages. Routledge Language Family Series. London &New York: Routledge. pp. 236–252 
  • Katsura, M. (1973). “Phonemes of the Alu Dialect of Akha”. Papers in Southeast Asian Linguistics No.3 (Pacific Linguistics, the Australian National University) 3 (3): 35–54. 
  • Lewis, Paul (1968a). “Akha phonology”. Anthropological Linguistics 10 (2): 8–18. JSTOR 30029167. 
  • Lewis, Paul (1968b). Akha-English Dictionary. Ithaca, NY: Southeast Asia Program, Cornell University, 
  • 西田, 龍雄「アカ語の音素体系: タイ国北部における山地民アカ族の言語の記述的研究」『音声科学研究』第4巻第1号、1966年、1–36頁、hdl:2433/52611 
  • 西田, 龍雄 著「アカ語」、亀井孝, 河野六郎, 千野栄一 編『言語学大辞典 第一巻 世界言語篇(上)あ-こ』三省堂、東京、1988年、59-95頁。 
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