鱗形屋 孫兵衛（うろこがたや まごべえ、生没年不詳）は、江戸時代の江戸の地本問屋。鶴鱗堂または鶴林堂と号す^[1]。山野氏^[1]。

来歴

万治年間、江戸の大伝馬町三丁目に開業した^[1]。寛文年間に噺本・仮名草子・菱川師宣の絵本・浄瑠璃本などを手がけた^[1]。享保6年（1721年）書物問屋仲間が結成されると、地本問屋仲間に名前を連ね、江戸の有力書肆として活躍した^[1]。当初は万屋清兵衛が商っていた八文字屋本を寛延年間には独占して刊行し、黒本・赤本・吉原細見、さらには正月の宝船の版画も手がけた^[1]。安永4年（1775年）恋川春町『金々先生栄花夢』を刊行して黄表紙の出版を主導する^[1]。しかし、江戸の出版界の発展に伴い、急速に家業が衰えて没落した^[1]。

作品

• 鳥居清倍 『市村竹之丞のかなや金五郎と沢村宗十郎のしまだのかんざえもん』 細判2枚続 漆絵 元文2年5月市村座『今ハ昔俤曽我』に取材
• 2代目鳥居清倍 『坂田半五郎のれんしやうぜうと三条勘太良のそがの十良』 細判 漆絵 元文3年正月中村座『宝曽我女護の島台』に取材
• 鳥居清忠 『浮絵劇場図』 横大々判 紅絵 元文
• 石川豊信 『桜樹に短冊を結ぶ女』 長大判 丹絵 寛保延享ころ
• 石川豊信 『花下美人』 大々判 丹絵 寛延
• 石川豊信 『初世瀬川菊之丞文読み立姿』 巾広柱絵 紅絵 シカゴ美術館所蔵
• 鳥居清満 『市村亀蔵の五郎』 細判 紅摺絵 宝暦9年5月市村座『分身鏃五郎』に取材
• 鳥居清広　『中村富十郎の中橋おまん』　細判　紅摺絵　日本浮世絵博物館所蔵　宝暦3年
• 北尾重政 『二代目市川団十郎の畑六郎左衛門』 細判 紅摺絵 明和4年 日本浮世絵博物館所蔵
• 歌川豊春 『琴棋書画』 大倍判 錦絵揃物 安永初期ころ

鱗形屋孫兵衛が登場する作品

• べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～（2025年、NHK大河ドラマ） - 演：片岡愛之助（予定）

脚注

参考文献

• 日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』第3巻 大修館書店、1982年 ※136頁
• 小林忠 大久保純一 『浮世絵の鑑賞基礎知識』 至文堂、1994年 ※209頁