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百匹目の猿現象

幸島を望む石波海岸に2004年に建てられた「百匹目の猿現象発祥の地」の石碑[1]。なお、同碑は2013年度に幸島の対岸にある標高44 mのフィールドミュージアム幸島公園に移設された[2][3]

百匹目の猿現象(ひゃっぴきめのさるげんしょう、: Hundredth Monkey Effect, Hundredth Monkey Phenomenon)とは、生物学現象と称して生物学者のライアル・ワトソンが創作した作り話である。

宮崎県串間市幸島に棲息するニホンザルの一頭がイモを洗って食べる事を覚え、同行動を取る猿の数が閾値(ワトソンは仮に100匹としている)を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったという筋書きであり、このように「ある行動、考えなどが、ある一定数を超えると、これが接触のない同類の仲間にも伝播する」という超常現象の実例とされていた。ニューエイジの「意識進化」の信念の実例として引き合いに出されることが多い[4]

なお、幸島においてイモを洗って食べるサルがいるのは事実である(大分県の高崎山にはイモを洗うサルはいない[5])。

作り話の起源

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ローレンス・ブレア英語版(英: Lawrence Blair)の1976年の著書『Rhythms of Vision: The Changing Patterns of Belief』(邦題:『超|自然学』)の序文を書いたライアル・ワトソンが、日本で起こった話として記したものが初出とされる[6]。ワトソンの1979年の著書『Lifetide』(邦題:『生命潮流』)では、幸島で実際に起きた猿の芋洗い行動を河合雅雄らの論文を出典として紹介すると共に、幸島ではこの後に異常が起きていたとして、「個人的な逸話」や「霊長類研究者の間に伝わる伝承」を元に詳細を即興で創作したとして現象の詳細が記された[7]。1982年には、この現象を核兵器廃絶運動に用いるべくケン・キース・ジュニア(en:Ken Keyes Jr.、1921年-1995年)が『The Hundredth Monkey』(邦題:『百番目のサル』)の題で出版した。『百番目のサル』では、詳細が記されているとしてワトソンの『生命潮流』を挙げていながらも[8]、この現象を創作ではなく事実であるとしている[9]

検証

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しかし、ロン・アマンドソン英語版 (英: Ron Amundson) が調べたところ、ワトソンが芋洗い行動に関する出典として挙げていた河合雅雄の論文[10]からも、ワトソンが述べた様な急激な伝播自体が幸島では実際には起きていない事が判明した[11]。この調査結果は『Skeptical Inquirer英語版』1985年夏号で発表された[12]。これに対しワトソンは「Whole Earth Review英語版」1986年秋号にてアマンドソンに返答し、この現象は実在するとしながらも、幸島で起きていない事は認めたという[13]

後にMarkus Pösselが河合にも確認したところ、ワトソンが主張する様な現象も伝承も見聞きしておらず、そもそも幸島内でも芋洗い行動は他の群れにまで広まっていないとの事だった(発表の1996年時点)[14]。河合は、つなぶちようじとのインタビューで「あれはライアル・ワトソンの作り話。そんな話は聞いたことがなかった。」と明確に否定している[15]。ワトソンは現象の論拠として川村俊蔵の論文[19]を唯一挙げていたが[7]、そこにもワトソンの主張を裏付ける記録は無かった[11]

日本における拡がり

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日本でもこの話が虚構である事は1990年の「別冊宝島[20]などで既に指摘されていたが、1996年に船井幸雄の『百匹目の猿―「思い」が世界を変える』にてシェルドレイクの仮説の実例としてワトソンの『生命潮流』からこの話が紹介され、船井の支持者らニューエイジ関係に広まった。船井によると、この現象は1994年に科学界で認められたというが[21]、具体的な説明は無く、そもそも1995年の「科学朝日[22]でも否定されている。また猿の行動に関して今西錦司著『人類の誕生 世界の歴史1』(河出書房、1968年)に詳細が書かれているとしているが[21]、そこにも船井やワトソンの主張を裏付ける記述は無い。

2016年9月にハフィントンポスト日本語版において、この現象があたかも事実であるように記述されたことがある[注 1][23][24]

脚注

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注釈

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  1. ^ 2016年07月04日の「ボトルボイス」から転載されたもの。

出典

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  1. ^ 百匹目の猿現象発祥の地”. 発祥の地コレクション. 2022年7月29日閲覧。
  2. ^ 平成26年第5回定例会(第4号12月 4日)”. 串間市議会/会議録検索システム. 串本市市議会. 2022年5月11日閲覧。
  3. ^ 大隅半島 幸島こうじま=「百匹目の猿現象 発祥の地」ってどういうこと?、「・・・という超常現象の実例のことを「百匹目の猿現象」といいます。」、半島は日本の台所、光文社
  4. ^ 島薗 2007, pp. 17–18.
  5. ^ 伊谷純一郎『高崎山のサル』、1954,1973,2010、ISBN 978-4062919777
  6. ^ ブレア 1988, p. 2.
  7. ^ a b ワトソン 1988, p. 209.
  8. ^ キース, p. 28.
  9. ^ キース 1984, p. 29.
  10. ^ Kawai 1965, pp. 1–30.
  11. ^ a b 本城達也. “みんなの想いが奇跡を起こす?「百匹目の猿現象」の真相”. 超常現象の謎解き. 2022年7月29日閲覧。
  12. ^ Kreidler, Marc (2019年2月4日). “History of CSICOP” (英語). Skeptical Inquirer. 2022年7月29日閲覧。
  13. ^ The Hundredth Monkey Phenomenon”. hilo.hawaii.edu. ハワイ大学. 2022年7月29日閲覧。日本語訳は、「百匹目の猿」の嘘を暴いた"The Hundredth Monkey Phenomenon"by Ron Amundson 忘却からの帰還、2005-08-02
  14. ^ kreidler, Marc (1996年5月1日). “Senior Researcher Comments on the Hundredth Monkey Phenomenon in Japan” (英語). Skeptical Inquirer. 2022年7月29日閲覧。
  15. ^ つなぶちようじ 僕のおしゃべり Vol.19 百匹目のサル - 河合雅雄へのインタビュー中に、百匹目の猿現象について河合自身が明確に否定している。
  16. ^ KAWAMURA, S. (1963). “The process of sub-cultural propagation among Japanese monkeys” (英語). Primate Social Behavior. 
  17. ^ Syunzo Kawamura. “目次” (pdf). 2018年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月22日閲覧。 「THE PROCESS OF SUB-CULTURE PROPAGATION AMONG JAPANESE MACAQUES」p68-82掲載、今西錦司「SOCIAL BEHAVIOR IN JAP ANESE MONKEYS, Macaca fuscata」はp82-90に掲載と記述あり。
  18. ^ Kawamura, Syunzo (1959-03-01). “The process of sub-culture propagation among Japanese macaques” (英語). Primates 2 (1): 43–60. doi:10.1007/BF01666110. ISSN 1610-7365. https://doi.org/10.1007/BF01666110. 
  19. ^ 『Primate Social Behavior』掲載[16] - PDF版目次[17]。同名の論文は1959年のPrimatesが初出[18]
  20. ^ 佐倉、伏見 1990, p. 158.
  21. ^ a b 船井, p. 24, 『百匹目の猿―「思い」が世界を変える』2刷.
  22. ^ 志水一夫「反核都市伝説“百番目のサル”の発信源」『科学朝日』1995年3月、100頁。 
  23. ^ コラム 百匹目の猿現象 田邊寿夫、BOTTLE VOICE、2016-07-04
  24. ^ 田辺寿夫(1971年生、整体師・心理カウンセラー) (2016年9月18日). “百匹目の猿現象”. ハフポスト. 2016年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月2日閲覧。

参考文献

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  • 伊谷純一郎『高崎山のサル』(光文社、1954年) - 高崎山のニホンザルの観察記録として知られる書。芋を食べる記述はあるが、洗う記述は見られない。
  • KAWAI, M (1965). “Newly acquired precultual behaviour of the natural troop of Japanese monkeys on Koshima Islet”. Primates (6): 1-30. 
  • Lawrence Blair "Rhythms of Vision: The Changing Patterns of Belief" (1976年、ニューヨーク:Schocken Books) 。初出(OCLC 780434297)は1975年、Croom Helm(イギリス)より出版。
  • Lyall Watson "Lifetide: the biology of the unconscious" (1979年、New York: Simon and Schuster) OCLC 644678858
    • ライアル・ワトソン『生命潮流―来たるべきものの予感』(35版)工作舎、1988年。 初版は1981年刊。 ISBN 4875020775
  • Ken Keyes Jr. "The Hundredth Monkey" (1982)
    • ケン・キース・ジュニア『百番目のサル』佐川出版、1984年。 ISBN 4914935031
  • 佐倉統、伏見貴夫「サルのいも洗いははたして文化か?」『誤解しているあなたのための新釈どうぶつ読本 : 動物の未知の世界を読み解く最新理論!』別冊宝島 119、JICC出版局、1990年10月、NCID BN05686924 
  • 船井幸雄『百匹目の猿―「思い」が世界を変える』サンマーク出版、1996年。 ISBN 476319156X
  • 島薗進『スピリチュアリティの興隆―新霊性文化とその周辺』岩波書店、2007年。 

関連文献

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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。 記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2022年6月)

本文の典拠ではないもの。

  • 今西錦司著『人類の誕生 世界の歴史1』(河出書房、1968年)
  • 山本弘「「百匹目のサル」の甘いささやき」『別冊宝島304』、宝島社、1997年。 『洗脳されたい! : マインド・ビジネスの天国と地獄』収録、ISBN 4796693009
  • 志水一夫 著、と学会 編『「百匹目のサル」を超えると大ブームが起こる!?』洋泉社、1997年。 『トンデモ超常現象99の真相』収録、ISBN 4896912519
    • 志水一夫 著、と学会 編『「百匹目のサル」を超えると大ブームが起こる!?』宝島社〈宝島社文庫〉、2000年。 『トンデモ超常現象99の真相』収録、ISBN 4796618007

関連項目

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外部リンク

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百匹目の猿現象
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