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敵基地攻撃能力

敵基地攻撃能力(てききちこうげきのうりょく、: Enemy Base Attack Ability)とは、弾道ミサイル発射基地など敵国の基地や拠点などを攻撃する装備能力[1] [2]自衛隊用語として反撃能力(はんげきのうりょく、: Counterattack ability)とも称される[3]

日本における歴史

制度調査委員会

敵基地攻撃は自衛隊の前身である保安隊の頃から検討されていた。1952年(昭和27年)9月2日、防衛政策における基本方針の立案作業のために保安庁に「制度調査委員会」が設置された。制度調査委員会の作業に関与したのは第一幕僚監部幕僚庶務室に所属する旧陸軍出身者であり、白紙状態から検討が行われた[4]。有事の所要防衛力として総兵力200万人以上が必要とされ、装備面では核兵器を除くあらゆる装備が議論の対象となり、ソビエト連邦ウラジオストク周辺を攻撃するための地対地中距離誘導弾の保有や、千島列島への逆上陸も考慮された[4]。同委員会の課題作業では、日本は守勢的作戦として「海上護衛作戦」「国土直接防空作戦」「基地制圧作戦(戦術的空襲)」「国内治安維持作戦」を実施するが、「専守的防衛作戦のみを以てしては如何に膨大な準備を以て之に当るとも敵の攻撃を長期に亘り完全に防止することは不可能であり」、現実問題として攻勢的作戦との併用が必要であるとされていた[4]

攻勢的作戦を日本が担うかは適宜国策によって慎重に決定されるべきだとした上で、以下の3点が攻勢的作戦の具体例として挙げられていた。

上記の3つの作戦は本土空襲と海上での危険を減らし、長期の抗戦を維持し得る利点があるとされ、1.は比較的小規模の部隊でしかも短期間で可能だが、2.は大きな消耗戦となることが予測されていた[4]

また、「自由陣営軍として行はれることが国防の完全を期する上からも希望される」ものとして、

以上の5点が挙げられた[4]

これらの検討は第一幕僚監部幕僚庶務室に所属する旧陸軍出身者により行われたとされ、日本は国際政治における主要国の一員として西側陣営に立ち、ソ連や中国を敵として第三次世界大戦を戦う構想であった[4]。日本の防衛政策を研究している明星大学非常勤講師の真田尚剛は「世界規模の戦争を経験した帝国軍人としての思考が読み取れる」とし、「長年ソ連を仮想敵国とし、また中国大陸で戦火を繰り広げた歴史を振り返ると、ここでは旧陸軍との連続性が認められる」と評している[4]

防衛庁における検討(1993年)

1993年(平成5年)、北朝鮮が発射した準中距離弾道ミサイルノドン」が日本海に落下したことを受けて、防衛庁は北朝鮮のミサイル発射基地への攻撃の研究を行った[5]。その結果、

  • (1).F-1支援戦闘機は航続距離が短いため、北朝鮮への攻撃後にパイロットは機体を捨てて日本海に脱出するしかない
  • (2).F-4EJで北朝鮮を攻撃する場合は、航続距離の問題で石川県の小松基地しか使用できない
  • (3).敵のレーダーをかく乱する電子戦機航空自衛隊は保有していない

以上のことから、戦闘機とパイロットを失う可能性が極めて高いと判断され、「敵基地攻撃は困難」と結論付けて文書化して研究は終了したとされる[5]

しかし、防衛庁は上記の研究後に何もしてこなかったわけではなく、むしろ積極的に敵基地攻撃に必要な装備体系の獲得に乗り出し始めていた[5]1999年(平成11年)に早期警戒管制機E-767の配備を開始し、2004年(平成16年)度予算でF-2戦闘機に搭載可能な精密誘導爆弾である「JDAM」を導入し、2005年(平成17年)からは電子妨害装置を搭載した電子戦機の開発に着手し、F-2戦闘機の航続距離不足は2006年(平成18年)末に配備される空中給油機KC-767で補うことが可能とされた。このように防衛庁は行われた論議を基に敵基地攻撃に使用できる装備の導入を進めていた[5]

防衛庁における検討(2004年)

2004年(平成16年)、新大綱策定のために防衛庁に設置された「防衛力の在り方検討会議」でまとめられた論点整理において、弾道ミサイルに対処するための敵基地攻撃について「引き続き米軍に委ねつつ、日本も侵略事態の未然防止のため、能力の保有を検討する」として、具体的にはハープーン ブロックIIトマホーク、戦闘攻撃機を搭載した軽空母の導入が検討対象とされたことが報じられた[6]

反撃能力の保有決定

2022年(令和4年)12月16日に防衛力強化に向けた新たな「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を政府が閣議決定した。反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記し、アメリカ製のトマホーク巡航ミサイルの2026年度配備を目指す[7]

関連する日本政府の答弁

敵基地攻撃能力を保有するべきと主張する論者が根拠とするのが、1956年に出された鳩山一郎首相の次の答弁である。

わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。 — 1956年の鳩山一郎首相答弁(船田中防衛庁長官代読)[8]

1970年中国核実験に成功し、北朝鮮が弾道ミサイルを発射して緊張状態にあった時に、当時の中曽根康弘防衛庁長官はこう答弁した。

明らかに日本の自衛行為や自衛力には限界があると思います。文民優位を徹底するということ、非攻撃性の装備でなければならない、徴兵を行なわない、海外出兵を行なわない、これらは日本国憲法の命ずるところであると解します。(中略)私は日本国憲法の命ずるところに従い、従来どおり専守防衛を目的とする日本独自の安全保障体制を整え、平和憲法下における独立国家として当然行なうべき努力を遂行しようと思っております。 — 1970年の中曽根康弘防衛庁長官答弁(1970年2月29日、参院本会議)[9]

法理論

この節の加筆が望まれています。 (2021年5月)

21世紀現在、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為」[10]を行う国への「制裁としての軍事的措置と自衛のための武力行使を除いて、武力行使禁止は慣習法上も確立したとされる」[11]ため、この武力不行使原則に敵基地攻撃能力も制約される。したがって、敵基地攻撃能力の国際法上の根拠は自衛権に求められる[8]

自衛権は国際連合憲章第51条に「武力攻撃が発生した場合に(if an armed attack occurs)」認められるものとされており、これは実際に攻撃が行われた後(たとえば、ミサイルが実際に発射された後)に限られるのか、攻撃が急迫している場合(たとえば、ミサイル攻撃の意図を表明している国が、具体的なミサイル発射の準備作業に着手している場合)にも認められるものなのかは議論がある[8]

方法

敵基地攻撃の方法は、航空機による敵基地攻撃の場合、戦闘機の管制機能を持つ早期警戒管制機(AWACS)に指揮された戦闘機が空中給油を受けて長距離を飛行し、敵基地に接近すると電子戦機妨害電波を発して敵の地上レーダーを撹乱する。さらに、戦闘機は対レーダーミサイルを発射して敵のレーダーを破壊する。このようにして、敵の防空網に突破口を作り、戦闘機がレーザー誘導爆弾等を投下して、敵基地や弾道ミサイルの移動式発射台を破壊する[2]

また、敵の指揮所や地対空ミサイル陣地などの地上固定目標に対しては、衛星利用測位ミサイルを利用した精密誘導兵器である巡航ミサイルや弾道ミサイルも使用される[2]

技術的課題

北朝鮮は、移動式発射台をおよそ200台保有していると見られ、より発射の簡単な固体型燃料への転換も急いでいる[12]

その他

東京新聞論説兼編集委員の半田滋は「安全保障関連法という違憲の疑いが濃厚な法律に実効性を与える『敵基地攻撃能力の保有』は『悪魔の招待状』というほかない」と主張しており[13]、また「反撃という言葉にもかかわらず、実態は真逆の『先制攻撃』も含む」「こうした言い換えは『全滅』を『玉砕』、『敗走』を『転進』と呼んできた旧日本軍と変わりなく、国民をミスリードする詐欺的手法とほかない」とも主張している[14]

脚注

出典

  1. ^ Wragg, David W. (1973). A Dictionary of Aviation (first ed.). Osprey. p. 240. ISBN 9780850451634 
  2. ^ a b c 日本大百科全書』(小学館)「敵基地攻撃能力」の項目
  3. ^ 松山尚幹 (2022年4月22日). “敵基地攻撃能力→反撃能力に改称”. 朝日新聞: p. 1. https://www.asahi.com/articles/DA3S15273692.html 2023年3月25日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g 真田 2021, p. 28-31.
  5. ^ a b c d 半田 2005, p. 54-57.
  6. ^ 朝日新聞 2004年7月26日
  7. ^ “反撃力保有へ歴史的転換 安保3文書、長射程ミサイル配備”. 共同通信. (2022年12月16日). https://nordot.app/976392485558386688 2022年12月27日閲覧。 
  8. ^ a b c 田中 佐代子(法政大学法学部准教授) (2021年1月18日). “敵基地攻撃能力と国際法上の自衛権”. 国際法学会エキスパート・コメントNo.2021-2. 国際法学会 "JSIL" Japanese Society of International Law. 2021年5月8日閲覧。
  9. ^ “「合憲の敵基地攻撃能力」とは? 世紀またぐ国会論戦にみる曖昧さ ”. 論座. (2020年7月5日). https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020070200001.html?page=2 2021年10月21日閲覧。 
  10. ^ 国際連合憲章第7章第39条安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する」
  11. ^ 篠原梓 (2009年2月). “武力行使禁止原則”. 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス. 時事用語事典. 2021年5月8日閲覧。
  12. ^ “敵基地攻撃、欠く議論 軍事問題のタブー視、逆手に導入も”. 朝日新聞デジタル. (2020年8月31日). https://digital.asahi.com/articles/DA3S14603716.html?iref=pc_ss_date_article 2021年10月21日閲覧。 
  13. ^ 半田滋 (2022年11月12日). “北朝鮮・中国の「ミサイル反撃」も…敵基地攻撃能力が日本を「壊滅」させる可能性”. 現代ビジネス. 講談社. 2022年12月20日閲覧。
  14. ^ 半田滋 (2022年12月5日). “自衛隊の「先制攻撃」も可能…安保関連3文書の改定で、今起きている「ヤバい事態」”. 現代ビジネス. 講談社. 2023年1月21日閲覧。

参考文献

  • 真田尚剛『「大国」日本の防衛政策――防衛大綱に至る過程 1968-1976年』吉田書店、2021年。ISBN 978-4905497929 
  • 半田滋『闘えない軍隊 肥大化する自衛隊の苦悶』講談社、2005年。ISBN 978-4062723312 

関連項目

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敵基地攻撃能力
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