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協同組合

協同組合(きょうどうくみあい)は、共通する目的のために個人あるいは中小企業者非営利組織等が集まり、組合員となって事業体を設立して共同で所有し、民主主義的な管理運営を行っていく非営利で相互扶助のための組織。社会的連帯経済の主要な担い手である。

協同組合の歴史

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1498年、世界で初めての協同組合であるThe Shore Porters Societyスコットランドアバディーンに設立された[1]

日本では江戸時代後期の天保(1830年-1844年)に、農村指導者の大原幽学の創案で下総国香取郡長部村(現・千葉県旭市長部)で農村救済の仕組みが作られた。

1844年、最初の近代的な協同組合とされる消費組合ロッチデール先駆者協同組合イギリスマンチェスターの郊外で設立された[2]

1895年イギリスロンドンで、国際協同組合同盟 (the International Co-operative Alliance: ICA) が設立された。2011年8月時点、本部はスイスにあり、94カ国の254団体が加盟し、傘下の協同組合の総組合員人数が10億人を超える世界最大の非政府組織 (NGO) となっている[3]。2019年時点では109カ国から319の協同組合組織(うち日本は17団体)が参加するまでに拡大。それらの組合員総数は10億人を超え、約2億8000万人分の仕事を生み出している。国際連合の諸機関と協同組合振興促進委員会(COPAC)を組織している[4]

ドイツでは19世紀、フリードリヒ・ヴィルヘルム・ライファイゼン が零細農民向けに、ヘルマン・シュルツェ=デーリチュが商工業者向けに金融を主とする信用組合を発達させた。これは産業組合法1900年制定)の手本となった[4]。ドイツ留学中にこうした動きを見た平田東助が感銘を受け、日本の報徳社の事例と併せて同法案の参考にした。

2016 年、「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」として、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産代表リストに、ドイツの申請に基づき登録された[5][6]

協同組合と女性

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協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という個人を重視する価値を基礎とすることから、従来の家父長制的社会において社会的地位の低かった女性が自分達の権利を獲得するための基盤となった。

日本においては女性が生活協同組合に参加することが、女性の権利の確立や女性の社会進出の確立に繋がったと評されている。生活協同組合コープこうべの源流の灘生活協同組合や神戸消費組合では1920年代から「家庭会」が行われ始めた。家庭会の中では主婦たちが裁縫の手順や食べ物の保存の仕方を学びあったり、社会や経済の動きの講話会を開催するなどしていた。

戦後になって永谷晴子らがこの活動をさらに大きくして今に繋がっている。また1970年代以降は生活クラブ生協連合会の大半を占める女性組合員らが、自分達の代表を地方議会に送り込もうという代理人運動が主に都市部で行われた。この運動は女性の議会進出の足がかりの一つとなっている。

各国の協同組合

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イギリスの協同組合

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協同組合が初めて誕生したのはイギリスである[7]。18世紀、ランカシャー州のロッチデールでは織物業が不景気に見舞われ、織物工の賃金も非常に安い状況にあった[7]。そこで28人のフラネル職工が集まって小さな組合を作り、小麦などを仕入れて組合員に分ける消費組合を誕生させた[8]ロッチデール先駆者協同組合)。その背景にはロバート・オウエンの思想があったとされている[8]

ドイツの協同組合

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ドイツは信用組合の祖国と言われている[9]。19世紀には農業者や手工業者による信用組合ができていた[9]。1851年にシュルツェ・デーリッチが初めての都市信用組合を、1862年にライフ・アイゼンが初めての農村信用組合を起こした[10]。これらの信用組合は設立や運営などに多少の違いはあるが貯蓄業務と貸出業務を営むという点で共通している[11]

デンマークの協同組合

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生産者組合が発達したのがデンマークである。19世紀末のデンマークでは農村部で深刻な不景気となっていた[12]。農産物の価格暴落に伴い、狭い国土を有効活用するため、畜産を主体とする酪農国へ転換する国民運動が展開された[12]。1882年に西ジュットランドのシェデリックで初めて酪農組合が組織された[12]

日本の協同組合

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現在の協同組合

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日本では、事業内容ごとに個別の法律(特別法)で種々の協同組合が規定されており、協同組合に関する一般的な規定は存在しない。法人税法では、協同組合等(きょうどうくみあいとう)に分類され[13]、全所得に対して、軽減税率の適用を受ける。また、事業分量配当金の損金算入が認められている。これは法人税法の別表第3に掲げられている。一部では協同組合基本法の制定を求める声もある[14][15]

1956年に日本協同組合連絡協議会(Japan Joint Committee of Co-operatives: JJC) を設立して、各種協同組合運動の連携とICAの総会等への参加をはじめとした協同組合の国際活動に伴う連携・協力等の活動を進めていた[16]。協議会は、2018年に日本協同組合連携機構(JCA)と改変されている。主な加盟組織はJA全中JA全農JA共済連農林中金家の光協会日本農業新聞日生協全漁連全森連こくみん共済 coop日本労協連大学生協連および労金協会のなどである。

一方、個人で構成される組合組織(農協、生協等)とその連合会とは異なり、主に中小企業の経営に関する指導支援や業界調整の役割を担う中小企業団体中央会などの中央組織もある。これらは、ICAに加盟していないものの、歴史的な経緯や相互扶助の原理原則という側面では、他の組合組織と概ね共通している。

個別法に基づく協同組合またはこれに類する組織には、例えば以下のものがある。

歴史的文脈での「協同組合主義」

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日本では1900年産業組合法が制定され、強い影響力を持つ大企業に対して零細企業の保護や連帯を進める政策が展開された。そのため、ここに活動の基礎を置く「協同組合主義」は、大資本の意向が最優先となる資本主義労働者第二次世界大戦前の「無産者」)の権利を拡大する社会主義とは異なる「第三の道」として提唱された[17]。特に第二次世界大戦で敗北した直後、1940年代後半の日本では山本実彦を委員長とした日本協同党協同民主党、そしてこれを継いだ国民協同党への流れとして続いた。これは資本主義を掲げる保守政党日本自由党民主党、社会主義・共産主義の実現を求める革新政党日本社会党日本共産党とは一線を画した中道政治勢力として機能した。日本協同党は多くの議員が公職追放対象者となって大きな打撃を受けたが、全国各地で結成された地域政党からの合流によって協同主義勢力は発言力を維持し[注釈 1]、1947年から1948年までの片山内閣芦田内閣では、国民協同党は社会党や民主党と組んだ三党連立内閣の与党となった。

その後、保守勢力の改編が続く中で国民協同党は呑み込まれ、最終的には船田中[注釈 2]など多くのメンバーが1955年の保守合同で成立した自由民主党に参加して「協同組合主義」の主張は姿を消したが、国民協同党の委員長(党首)として片山内閣の逓信大臣を経験した三木武夫は自民党で番町政策研究所を率い、最左派の非主流派として保守傍流に置かれながらも、1974年に自由民主党総裁内閣総理大臣となって三木内閣を組閣した。三木は首相として市場を独占する大企業の分割を含む独占禁止法改正を目指し、大幅な修正や曲折を経て社会党を含む野党の支持により同法案を衆議院で通過させたが、参議院では自民党内の反発を抑えられずに廃案になり、党内孤立による三木の影響力低下の一因となった。ただし、1976年の下野後も含め、三木の政治哲学には「協同組合主義」がずっとあったという指摘が妻の睦子、さらに政治路線では三木とは異なる中曽根康弘などからなされている。

一方、1942年の第21回衆議院議員総選挙(翼賛選挙)で当選していた吉田正は終戦直後に起きた上記の協同主義勢力の結集に参加していたが、1952年の第25回衆議院議員総選挙で国政に復帰した時は右派社会党の所属となっていた。吉田はその在職中に農民中心の企業を志して協同乳業を設立し、同社は大手企業との提携を続けながらも存続している。

1970年代以降、生活クラブ生活協同組合(生協)から起こった代理人運動も協同組合が議会に進出した例の一つである。主に都市部を中心に今も地方議員を多数擁している。

協同組合原則

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国際協同組合同盟 (ICA) は、100周年記念大会(1995年9月、マンチェスター・イギリス)で、「21世紀に向けた世界の協同組合の活動指針を示す新しい協同組合原則」を採択した[18]

定義

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協同組合は、人びとの自治的な組織であり、自発的に手を結んだ人びとが、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じて、共通の経済的、社会的、文化的なニーズと願いをかなえることを目的とする。

価値

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協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とする。協同組合の創設者たちの伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的価値を信条とする。

原則

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協同組合原則は、協同組合がその価値を実践するための指針である。

  • 第1原則「自発的で開かれた組合員制」
  • 第2原則「組合員による民主的管理」
  • 第3原則「組合員の経済的参加」
  • 第4原則「自治と自立」
  • 第5原則「教育、研修および広報」
  • 第6原則「協同組合間の協同」
  • 第7原則「地域社会(コミュニティ)への関与」

記号

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協同組合を表すが「全角括弧付き協」としてUnicodeに含まれている。

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+323F - ㈿
㈿
全角括弧付き協
PARENTHESIZED IDEOGRAPH ALLIANCE
U+32AF - ㊯
㊯
丸協
CIRCLED IDEOGRAPH ALLIANCE

脚注

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注釈

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  1. ^ 一例として、協同民主党の結成に参加した日向民主党が挙げられる。同党は宮崎県(旧・日向国)のみで活動したが、合流直前の1946年4月に行われた第22回衆議院議員総選挙では大選挙区制の宮崎全県区で定数6のうち川野芳満などが公認候補4人が当選し、全国での獲得議席数でも共産党の5人に次いで第6位となっていた(日本協同党は14人で4位)。
  2. ^ 船田は議員在職中に日本協同党に参加したが公職追放となり、国政復帰は国民協同党消滅後の1952年に自由党から果たした。

出典

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  1. ^ History”. The Shore Porters' Society. 2019年2月18日閲覧。
  2. ^ David Thompson (July–Aug 1994). “Cooperative Principles Then and Now”. Co-operative Grocer (National Cooperative Grocers Association, Minneapolis). オリジナルの2007年10月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071010012855/http://cooperativegrocer.coop/articles/index.php?id=158 2008年6月26日閲覧。 
  3. ^ 国際協同組合同盟 (ICA) の紹介 Archived 2008年10月15日, at the Wayback Machine.
  4. ^ a b 【一から学ぶ協同組合】(8)世界的な広がり 組合員数は10億人超/ICA 国連と連携も『日本農業新聞』2019年5月25日(7面)。
  5. ^ UNESCO » Culture » Intangible Heritage » Lists » Idea and practice of organizing shared interests in cooperatives(2017年 7月 11日閲覧)
  6. ^ 農業協同組合新聞【電子版】2016年 12月 15日「協同組合」を「無形文化遺産」登録-ユネスコ(2017年 7月 11日閲覧)
  7. ^ a b 鈴木俊彦『協同組合の軌跡とビジョン』農林統計協会、2006年、3頁
  8. ^ a b 鈴木俊彦『協同組合の軌跡とビジョン』農林統計協会、2006年、3-4頁
  9. ^ a b 鈴木俊彦『協同組合の軌跡とビジョン』農林統計協会、2006年、4頁
  10. ^ 鈴木俊彦『協同組合の軌跡とビジョン』農林統計協会、2006年、4-5頁
  11. ^ 鈴木俊彦『協同組合の軌跡とビジョン』農林統計協会、2006年、5頁
  12. ^ a b c 鈴木俊彦『協同組合の軌跡とビジョン』農林統計協会、2006年、6頁
  13. ^ 協同組合等;法人税法第2条第7号
  14. ^ 堀越芳昭「協同組合基本法の提案」
  15. ^ 河野栄次「協同組合の旅から」 - ウェイバックマシン(2013年6月2日アーカイブ分)
  16. ^ 日本生協連「協同組合とは」
  17. ^ 竹中佳彦、「戦後日本の協同主義政党-行動主義の通俗化と分化」『年報政治学』 1998年 49巻 p.169-194, doi:10.7218/nenpouseijigaku1953.49.0_169
  18. ^ イアン・マクファーソン『21世紀の協同組合原則-ICAアイデンティティ声明と宣言』日本協同組合学会訳・編、日本経済評論社、2000年、16-22頁。

関連項目

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外部リンク

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協同組合
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