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スモルト

ギンザケのスモルト

スモルト英語: Smolt)とは、サケマス類でパーマークなど特有の体色が薄くなると共に銀色になった個体のことで、「銀毛」(ぎんけ)「シラメ」とも呼ばれる。また、海水への適応が完了した稚魚のこと。ヒポキサンチングアニンなどの色素量の増加が外観上の変化を起こす。ヤマメでは「肥満度の低下」「背ビレや尾ビレの先端の黒化」などの形態的変化を併せて発現する。

その現象を「銀化変態[1]、「スモルト化」[2]英語: Smoltification)、「スモルト変態」[3](parr-smolt transformation)[4]と呼び、海水耐性(適応力)が発現していることを示す変化である。

海水耐性(適応)を獲得した魚では、ATPアーゼ活性が高まり「血中ナトリウム濃度の調整」が出来るようになる。つまり、海水中で浸透圧調節が可能となることから、直接海水へ投入された場合でも高率で生存する。降海の目的は、河川と比較し圧倒的に豊富な海洋の餌を得る事にあるとされている。海洋生活では豊富な餌と、スモルト化に合わせて分泌される成長ホルモンの効果もあり、河川残留型の2-4倍の体長へと成長する。

発現

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ヤマメの体色変化、上がスモルト化個体

甲状腺ホルモン成長ホルモンコルチゾルなど数種類のホルモンが関与している。自然界で発現を左右させる要素は、環境の青色や生息密度と餌の量が強く関係しているとされ、魚種毎に一定の体長(重量)に達した個体がスモルト化していると考えられている[5][6]。スモルト化する時期は同一魚種でも地域差がある。また、ヤマメ、アマゴでは性別により有意な差があり、北海道ではメスのほぼ全てがスモルト化する。また養殖でスモルトを増やすために青色の水槽で飼育すると発現率が高まる。

北海道に生息するヤマメの例では、2月頃に銀化兆候が現れ「銀化パー」と呼ばれる状態になる。4月頃には背ビレ先端部の黒化が認められるようになると共に、グアニン色素量が増し[1]パーマークは薄れ「前期スモルト」となる。5月には更に銀色が強く背ビレの黒化が進み「中期スモルト」となる。6月には体色は銀白色となりパーマークは消失する、また背ビレは完全に黒くなり「後期スモルト」となりスモルト化は完了する。銀化が完了すると体の厚みが薄くなり肥満度が減少する。血中のチロキシン濃度は銀化の始まりと共に上昇し、銀化の最盛期に最大値となるが8月以降は減少していく。降川は群れで行われるが、スモルト化の進行と共に攻撃性は弱くなる[7]

実際の降川(降海)のきっかけは、降雨による増水の刺激や天体のの満ち引きが影響し、新月によって誘発され[8][9]、群れで川を下り海に向かう。浮上後すぐに降海を始めるシロザケでも、淡水から直接海水に入った場合は生存率が低下する、従って、汽水域で一定時間順応し海水生活に移るものと考えられる。実際に稚魚の観察結果からは、約12時間で海水対応能力を身につけている事が判明している。

類似現象
「無斑」と呼ばれる模様の欠如した個体が発生する現象がある[10]。これは突然変異により外見の変化を起こしている物で、メラニン色素の欠如したアルビノと似た現象である。ニジマスに於いては、無斑個体を選抜養殖し固定系統のホウライマスとして商品化されている[11]

スモルト化決定の主要因

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性差と遺伝的な影響を排除する為、遺伝異変を持たないアマゴのメスを使用した実験を行った桑田(2017)は下記の様に報告している[12]

  1. 成長率とは関係無く、初秋のスモルト決定期に閾値体重を超えた個体がスモルト化する。
  2. 決定期以後に、閾値体重を超えてもスモルト化しない。
  3. 決定期に閾値体重を超えていた場合は、決定期以後の成長を抑制しても大部分がスモルト化する。
  4. 決定期に閾値体重を超えなかった場合は、早く成長させてもスモルト化しない。

結果、主要因は体サイズであるとしている[12]

養殖において

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養殖の目的により銀化に対する捉え方は異なる。

資源増殖の為の養殖
海洋生活をさせ、より成長した個体を捕獲することが目的であるため、回帰率を高めるために銀化した個体を放流する。特に、自然降海型が生息しないベニザケでは、スモルト化時期を人為的に制御し発現させ放流を行っている。
食用養殖
銀化した個体は体が薄く体脂肪量が落ち食味が悪化することから食用魚としては敬遠され流通せず、多くは遊漁用に放流されるか次世代のための親魚として利用される。

種による差違

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  • ビワマス琵琶湖固有種で陸封期間が10万年程度とされる種。海水耐性は失われ、スモルト化した個体でも海水中では生存できない。
  • サケカラフトマスでは、孵化・浮上後直ちに降海し、海洋生活を行うとされている。
  • ベニザケ:1-3年、河口付近の湖沼で滞留後に降海する。天然の個体は0歳魚の8月と1歳魚の5-6月にスモルト化する。12cm程度で人工的にスモルトを発現させる事が可能となっており、母川回帰した個体の捕獲を目的とした放流に役立っている[13]

脚注

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  1. ^ a b 浦和寛, 原彰彦, 山内晧平、「サクラマスの銀化変態に伴う血中チロキシン量,皮膚および血中グァニン量,および血清総蛋白量の変化」『日本水産学会誌』 1993年 59巻 7号 p.1225-1229, doi:10.2331/suisan.59.1225, 日本水産学会
  2. ^ 杉若圭一, 小島博、「厚田川におけるサクラマス幼魚のスモルト化に及ぼす生息密度の影響」『水産孵化場研究報告』 1984年 39号 p.19-37, NAID 120005594734, ISSN 0286-6536, 北海道立水産孵化場
  3. ^ 春日井潔、佐々木義隆、根室管内におけるサケの放流場所と河川回帰の関係 (PDF) 北海道水産試験場研究報告 第89号(2016年3月発行)
  4. ^ 朴光植, 竹内俊郎, 横山雅仁, 佐藤秀一、「ニジマスの成長および塩分耐性に及ぼす飼料中塩化ナトリウム含量の影響」『日本水産学会誌』 1998年 64巻 3号 p.469-474, doi:10.2331/suisan.64.469, 日本水産学会
  5. ^ 松村幸三郎、八重樫博文、稲垣和典、奈良和俊、北海道東部産サクラマス幼魚における冬季間の給餌抑制がスモルト化に与える影響 (PDF) 『さけ・ます資源管理センター技術情報 魚と卵』 第164号 1995年 p.41-47
  6. ^ 赤石正勝、北海道東部産サクラマス幼魚における秋季体サイズと翌春のスモルト化との関係 (PDF) 『さけ・ます資源管理センター技術情報 魚と卵』 第161号 1992年 p.73-77
  7. ^ 岩田宗彦, 小島大輔、「サケ科魚類の降河行動の解発まで」『比較内分泌学』 2008年 34巻 129号 p.82-85, doi:10.5983/nl2008jsce.34.82, 日本比較内分泌学会
  8. ^ サクラマスの生態と サクラマスの生態と 山形県における現状 山形県内水面水産試験場
  9. ^ 棟方有宗, 三浦剛、「サクラマスのライフサイクルの調節機構の解明と教材化」『宮城教育大学紀要』 2008年 43巻 p.105-112, 宮城教育大学
  10. ^ 武田恵三, 小野寺聡, 吉安克彦、「最上川, 日向川水系 (山形県) の特殊斑紋のイワナ」 『魚類学雑誌』 1978-1979年 25巻 1号 p.58-64, doi:10.11369/jji1950.25.58, 日本魚類学会
  11. ^ 石井吉夫, 小山舜二, 今泉克英、「ホウライマス (無斑ニジマス) の養殖について」 『水産増殖』 1980-1981年 28巻 3号 p.128-133, doi:10.11233/aquaculturesci1953.28.128, 日本水産増殖学会
  12. ^ a b 桑田知宣、「アマゴのスモルト化決定の主要因は体サイズである」 『日本水産学会誌』 2017年 83巻 4号 p.548, doi:10.2331/suisan.h28-93, 日本水産学会
  13. ^ 伴真俊、伊藤二美男、清水勝、ベニザケ0年魚秋スモルト放流の試み (PDF) さけ・ます資源管理センター技術情報 2002年 p.29-32

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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