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グランドツアー

パンテオン

グランドツアー:Grand Tour:Gran Turismo〈グランツーリスモ[注釈 1]〉)とは、17世紀初頭から19世紀初頭までイギリスの裕福な貴族の子弟が、その学業の終了時に行った大規模な国外旅行[1]

概要

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Letters from several parts of Europe and the East, 1763
18世紀にウィリアム・トマス・ベックフォードが辿った行程例

17世紀になりそれまで続いたヨーロッパの戦乱が落ち着きを見せ、宿や駅馬車、交通網など旅行に必要な環境が整ってきた。それ以前の旅行は商用など実用的な目的があるものがほとんどだったが、グランドツアーの流行は私的な旅行が始まった時期と重なっている[2]

文化先進国のフランスイタリアが主な目的地で、主要都市の文化や上流社会を体験する機会となっていた[1]修学旅行と比較されることがあるが、グランドツアーは学校主催の教育旅行ではなく個人主催であったこと、費用も賄うことができる一部の者のみが参加したこと、グランドツアーは期間が数か月から数年と長いことなど違いがある[1]

家庭教師が同行を務めるのが一般的で、トマス・ホッブズアダム・スミスも同行した事がある。旅行の間、若者は近隣の諸国の政治文化芸術、そして考古学などを同行の家庭教師から学んだ。彼らは見物したり、勉強したり、買い物に精を出したりする。中には女性についての修行に励むものもあった[2]。グランドツアーは、若いイギリスの青年たちにとっては、様々な実情や状況に合った生きた知識を手に入れるための実用的な好機でもあったのである。哲学者ジョン・ロックSome Thoughts Concernig Education(1693)において、青年は学業の締めくくりとなるグランドツア-を通して、外国語や上品な行儀作法とともに進取の精神と決断力を学ぶべきと説いている[3]

家庭教師の監視のもと、あるいはお付きの者の世話を受けながら、若者たちは旅行に出かけた。旅行の最初のスタートは英仏海峡を渡って、フランスに入ることである。多くの若者にとっては、度重なる両国間の激動の時代以来、これ自体がすでにひとつの試練でもあった。

フランスは、その礼儀作法や社交生活の洗練さによって、イギリスの貴族階級の高貴さとはまた違った上品なマナーを身につけ、態度振る舞いに磨きをかけるということから人気があった。

イタリアは、古代ローマルネサンスの遺産が多く、最も人気のある場所のひとつであった(同時に、芸術を志す若者が、ヨーロッパ各国から古代の彫刻などを学ぶために集まった)。ルネサンスに影響を受けた若者によって、やがてイギリスにも新古典主義の建物が多く造られるようになった。

グランドツアーの黄金期はフランス革命の開始とナポレオンの登場による大陸の混乱とともに一旦の終焉を迎えるが、19世紀に入ってからも、最良の教育を受けた若者たちは、グランドツアーに出かけるのが常であった。その後、これは若い女性たちにとっても一種のファッションになっていった。パトロンとなってくれるオールドミスとイタリア旅行をするというのは、上流階級の淑女にとって教育のひとつとなったのである。 トーマス・コーヤットの本『Coryat's Crudities』は大ヒットとなり、グランドツアーに出かける若者たちにマニュアルが求められていたことの証である。

19世紀、アルプス山脈にはグランドツアーの伝統によってイギリス人の若者が多く訪れた。アルプス山脈の主峰39座のうち、31座の初登頂はイギリス人によることになった。この頃になると、イギリス人だけでなくヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国の若者にもグランドツアーは広まり、蒸気船蒸気機関車の登場により行先はより拡大され、世界一周へとつながっていった[4]。それは従来のグランドツアーの終焉で、トーマス・クックによる団体旅行の始まりであった。

グランドツアーあるいはグランツーリスモの名称は、長距離移動手段の中核を担った馬車から派生した自動車の世界において、カテゴリの一つとして現在でも使用されている(グランツーリスモを参照)。

なお、グランドツアーという用語は、イタリアに4回旅行したイギリスのカトリック司祭、リチャ-ド・ラッセルズ(Richard Lassels;1603 ?-1668)の没後出版書 An Italian Voyage, or, Compleat Journey through Italyにおいて初めて使用された表現である[3]

影響

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旅行記
旅行で得た情報は、旅行記の形で記録に残された。こういった旅行記録は、のちにグランドツアーなどを行う旅行者にとって旅行案内書となった[5]
旅行産業
裕福な人間の移動であるため、その移動先は賑わい、他の旅人も旅行しやすくなるよう旅行路が整備されていった[5]

脚注

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注釈

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  1. ^ イタリア語の原音により近いカナ表記は「グラン・トゥリーズモ」である。

出典

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  1. ^ a b c 藤田和志、家田仁. “修学旅行にみる『旅』の意義〜自己錬磨型教育旅行の導入・変容そして現代的意義〜”. 土木学会. 2021年2月12日閲覧。
  2. ^ a b 海野 2009, pp. 67–68.
  3. ^ a b Gertrude Cepl-Kaufman / Antje Johanning: Mythos Rhein. Zur Kulturgeschichte eines Stromes. Darmstadt: Wissenschaftliche Buchgesellschaft 2003 (ISBN 3-534-15202-6), S. 108.
  4. ^ 『グローブトロッター』中野明、朝日新聞出版、2013、p8
  5. ^ a b 加藤, 一輝「旅行記から旅文学へ : グザヴィエ・ド・メーストル『部屋をめぐる旅』の文学史的位置づけ」2020年6月1日、doi:10.15083/00079419 

参考文献

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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2015年3月)
  • 本城靖久 『グランド・ツアー 英国貴族の放蕩修学旅行』 中央公論社中公文庫〉、1994年、ISBN 412-2021804。旧版は中公新書(1983年)
  • 石ノ森章太郎 『グランドツアー 英国式大修学旅行』 原作:本城晴久、脚本:仲倉重郎、中央公論社〈中公コミック・スーリ・スペシャル〉、1997年、ISBN 412-4104677
  • 海野弘『酒場の文化史』講談社学術文庫、2009年。ISBN 9784062919524 
  • 中野明 『グローブトロッター 世界漫遊家が歩いた明治ニッポン』 朝日新聞出版、2013年、ISBN 402-331210X
    • 改訂版 『世界漫遊家(グローブトロッター)が歩いた明治ニッポン』 ちくま文庫、2016年、ISBN 448-0433996

関連文献

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関連項目

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外部リンク

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