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オオスズメバチ

オオスズメバチ
magnifica亜種のオオスズメバチの標本
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハチ目(膜翅目)Hymenoptera
亜目 : スズメバチ亜目Apocrita
上科 : スズメバチ上科 Vespoidea
: スズメバチ科 Vespidae
亜科 : スズメバチ亜科 Vespinae
: スズメバチ属 Vespa
: オオスズメバチ V. mandarinia
学名
Vespa mandarinia
Smith, 1852
和名
オオスズメバチ
英名
Northern giant hornet

オオスズメバチ(大雀蜂、学名:Vespa mandarinia)は、ハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属昆虫の一種である。
英名は Asian giant hornetJapanese giant hornetが使われていたが、欧米などを中心として世界中に生息域を広げているので、英名を "Northern giant hornet"に改めた[1]

分布

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オオスズメバチは、日本全国および、インドから東南アジア東アジアにかけて広く分布する[2]。日本では北海道から九州に分布しており、南限は屋久島、種子島近辺である。2019年にはアメリカ合衆国ワシントン州でも確認された[3]。さらに2020年10月には同州で同国初の営巣が確認された[4]

亜種

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  • Vespa mandarinia Smith, 1852[5] - 基亜種。中国東部、韓国、ロシア、日本に分布[6]。日本産は亜種 Vespa mandarinia japonica Radoszkowski, 1857として扱われることがある[7]
  • Vespa mandarinia magnifica Smith, 1852 - 中国西部、インド、ネパール、ミャンマー、ラオス、半島マレーシア[6]
  • Vespa mandarinia nobilis Sonan, 1929 - 台湾[6]

形態

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体長は女王バチが40 - 55 mm、働きバチが27 - 40 mm、雄バチが 27 - 45 mm[8]。世界最大のハチである。頭部はオレンジ色、胸部は黒色、腹部は黄色と黒色の縞模様で、羽は茶色。雄バチは毒針(産卵管)を持たない。

生態

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頭部の詳細
オオスズメバチ
樹液を吸うオオスズメバチ
2匹のオオスズメバチ
オオスズメバチの幼虫

以前は標準和名としてオオスズメバチのほか、単にスズメバチを用いることも多かった。

木の根元などの土中、樹洞、人家の床下、屋根裏などの閉鎖空間に巣を作る[9]。巣は、枯れ木などから集めた繊維を唾液のタンパク質で和紙のように固めて六角形の管を作り、この管が多数集まった巣盤を数段連ねる。

日本に生息するハチ類の中でも強い毒性を持ち、かつ攻撃性も高い危険な種である。オオスズメバチの日本亜種が持っている毒の半数致死量 (LD50) は4.1mg/kgである[10]。毒液中にはアルコールの一種からなる警報フェロモンが含まれており[11][12]、巣の危機を仲間に伝える役割も果たしている。また、本種は毒針のほか、強力な大顎で噛み付くことで捕食対象を攻撃する。

飛行能力も高く、時速約50 kmで飛翔し、狩りをする時は1日で約100 kmもの距離を移動できる持久力も持つ[13]

夏季に幼虫に与えられる餌は幅広く、カナブンなどの小、中型甲虫類、他種のハチカメムシ、セミなどの半翅目チョウなどの鱗翅目、あるいはスズメガカミキリムシの幼虫など大型のイモムシが頻繁に捕食される。これらの昆虫が減少する上、大量の雄蜂と新女王蜂を養育しなければならない秋口には本種の攻撃性は特に高まり、返り討ちに遭う危険もあるカマキリ等の大型肉食昆虫を襲ったり、セイヨウミツバチキイロスズメバチモンスズメバチニホンミツバチなど、巨大なコロニーを形成する社会性の蜂の巣を襲撃して需要を満たすこともある。襲撃は、スズメバチ類としては例外的に集団で行われる。巣の働き蜂を全滅あるいは逃走させた後には、殺した働き蜂も幼虫の餌とするが、大量の死骸は処理しきる前に腐敗が始まり餌に適さなくなるため、主に占領した巣の中で時間をかけて大量の生きた蛹や幼虫、筋肉に富む成虫の胸部などを噛み砕きペースト状にした後、肉団子状にして運び出す。

より大型の巣を作り、多数の働き蜂を擁するキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を襲撃する場合、オオスズメバチ側にも大きな被害が出る場合が多いものの、巣の占領に成功すればその損害を補填できるだけの幼虫やさなぎ、成虫の死骸を収穫できる。しかし、チャイロスズメバチの巣を襲撃する場合には、チャイロスズメバチは他のスズメバチ類に比べて強靭な外骨格をもつため、大顎や毒針による攻撃が必ずしも有効に機能せず、追い返されることもある。

また、クヌギなどの樹液に集まり樹液を採取する。

本種の天敵にはキイロスズメバチクロスズメバチ類と同様、ヒトのほかにカマキリ類、猛禽類のハチクマなどが挙げられる。捕食関係ではないが、夏場の樹液に集まる際に、小型のカナブンやコクワガタなどの小型の甲虫類には強気で対応する一方、カブトムシやクワガタムシなどの大型の甲虫に対しては強力な顎と針をもつ本種でも抵抗できず、餌場を独占される場合が多い。特にこのような虫が全盛となる7-8月頃にこの風景はよく見受けられるため、この時期の本種は大型甲虫などが活動しない昼間や朝方を狙って樹液に来ることが多くなる[注 1]。しかし、最近の研究でカブトムシやノコギリクワガタ等の脚に噛み付いたりして餌場から追い出したりする事がわかってきている。また、大型甲虫以外にも本種を追い立てる昆虫に、オオムラサキがある。同種のオスの気性は激しく、樹液を争う際に羽を広げて本種を追い立てることが知られている。

本種に寄生する昆虫には、腹部に寄生するネジレバネの一種が挙げられる。

人との関わり

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極めて強力な毒と高い攻撃性は人間にとっても非常に危険なものであり、毎年同種に刺されたことによる死傷事案が(特に攻撃的になる秋口に)発生しており、代表的な害虫の一つとして扱われるが、その獰猛で危険な性格と圧倒的存在感により、昆虫類の中では高い人気を誇る。

養蜂における影響

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オオスズメバチが日本産亜種であるニホンミツバチを含むトウヨウミツバチ (Apis cerana) の巣を襲撃した場合、オオスズメバチの集団攻撃が始まるまでにこの単独のオオスズメバチが撃退されなければ、オオスズメバチはミツバチの巣を占拠できる可能性が非常に高くなる。集団攻撃より前の撃退とは、オオスズメバチの働き蜂が単独で偵察している(集合フェロモンにより同じ巣の働き蜂を集結させる前の)段階で、ミツバチが集団で敵を押し包む行動によって作られる蜂球で蒸し殺されることをいう。これを熱殺蜂球という。蜂球の内部はオオスズメバチの致死温度(46 - 50 ℃)に近い50 ℃になり、かつ蜂球内の二酸化炭素濃度が3-4%ほどまで上昇し[14]、相対湿度が90%以上に向上することで、オオスズメバチの致死温度を下げることがわかっている[14]

また、セイヨウミツバチは、大群で相手の腹の周りを圧迫して呼吸を阻害し、約1時間かけて窒息死させる窒息スクラムという対抗手段を持っている[15][16]。しかし、これはモンスズメバチ以下の敵しか想定していないため、オオスズメバチに対抗する方法にはならず、養蜂家による庇護がなければ高確率での全滅を余儀なくされる(数十匹ほどのオオスズメバチが、4万匹のセイヨウミツバチを2時間ほどで殲滅できるという)[17][18]。このことが、飼育群からの分蜂による野生化が毎年あちこちで発生しているにもかかわらず、セイヨウミツバチが日本で勢力拡大するのを防ぐ要因になっていると考えられる。実際、オオスズメバチの生息していない小笠原諸島ではセイヨウミツバチの野生化群が増加し、在来のハナバチ類を圧迫して減少させていることが確認されており、これらのハナバチ類と共進化して受粉を依存している固有植物への悪影響が懸念されている。

食用

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熊本県球磨地方[19]宮崎県高千穂のように、地方によっては幼虫やさなぎ、成虫を珍味として食す習慣がある。成虫の毒針を取り除き、蜂蜜焼酎につけ込んだものも見られる。また、本種そのものを食すわけではないが、本種の幼虫が肉団子をもらう代わりに成虫に与える栄養液(VAAM)の成分を参考にして作られた栄養ドリンクやサプリメントが、日本をはじめとするアジアやヨーロッパで販売されている[20]

脚注

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注釈

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  1. ^ 本種は完全な昼行性ではなく、夜間にも多く活動する。

出典

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  1. ^ 昆虫学会、オオスズメバチの英名を変更 「アジアン」改め「ノーザン」に”. CNN.jp (2022年7月27日). 2020年8月23日閲覧。
  2. ^ オオスズメバチ 上野高敏 -Takatoshi UENO- 2017年12月5日閲覧
  3. ^ Douglas Main (2020年5月4日). “'Murder hornets' have arrived in the U.S.-here's what you should know” (English). National Geographic Society. 2020年5月22日閲覧。
  4. ^ 「殺人バチ」オオスズメバチの巣、米国内で初めて発見” (Japanese). AFPBBNews (2020年10月24日). 2020年10月24日閲覧。
  5. ^ Smith, F. (1852). “VIII. Descriptions of some new and apparently undescribed species of hymenopterous insects from North China, collected by Robert Fortune, Esq.”. Transactions of the Royal Entomological Society of London 7 (2): 33-44. doi:10.1111/j.1365-2311.1852.tb02208.x. https://doi.org/10.1111/j.1365-2311.1852.tb02208.x.  (Vespa mandarinia: p. 38)
  6. ^ a b c Archer, M.E. (2012). Penney, D.. ed. Vespine wasps of the world: behaviour, ecology and taxonomy of the Vespinae. Monograph Series. 4. Siri Scientific. ISBN 9780956779571. OCLC 827754341 
  7. ^ 森林生物データベース 00025 オオスズメバチ”. www.ffpri.affrc.go.jp. 森林研究・整備機構. 2020年5月5日閲覧。
  8. ^ オオスズメバチ、森林総合研究所、2010年4月18日閲覧
  9. ^ 松浦誠 (6 2004). “都市における社会性ハチ類の生態と防除(5)スズメバチの都市における生活史と適応”. ミツバチ科学 25 (2). ISSN 03882217. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010700283.pdf. 
  10. ^ “Hornet venoms: Lethalities and lethal capacities”. Toxicon 24 (9): 950-954. (1986). doi:10.1016/0041-0101(86)90096-6. ISSN 0041-0101. https://doi.org/10.1016/0041-0101(86)90096-6. 
  11. ^ 寺部宏一, 小野正人, 堀浩「日本産スズメバチ属の警報フェロモンに関する研究」『日本応用動物昆虫学会大会講演要旨』第47巻、日本応用動物昆虫学会、2003年、92-92頁。 
  12. ^ Insect signalling: Components of giant hornet alarm pheromone(オオスズメバチの警報フェロモン)、Nature, 2003
  13. ^ Brian Handwerk, "Hornets From Hell" Offer Real-Life Fright, National Geographic News(October 25, 2002), 2010年4月18日閲覧
  14. ^ a b 菅原道夫「捕食者スズメバチに対するニホンミツバチの防衛行動-蜂球内でのスズメバチの死の原因解明-」『比較生理生化学』第30巻第2号、日本比較生理生化学会、2013年、71頁、doi:10.3330/hikakuseiriseika.30.68 
  15. ^ Alexandros, Papachristoforou (2007). “Smothered to death: Hornets asphyxiated by honeybees”. Current Biology 17 (18): 795-796. doi:10.1016/j.cub.2007.07.033. https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(07)01712-5?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0960982207017125%3Fshowall%3Dtrue. 
  16. ^ “ミツバチ、必殺技「窒息スクラム」で天敵スズメバチを撃退”. AFPBB News. (2007年9月18日). https://www.afpbb.com/articles/-/2284905?pid=2156093 2020年10月24日閲覧。 
  17. ^ MATSUURA Makoto, SAKAGAMI Shôichi (10 1973). “A Bionomic Sketch of the Giant Hornet, Vespa mandarinia, a Serious Pest for Japanese Apiculture (With 12 Text-figures and 5 Tables)”. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido University 19 (1): 144. https://hdl.handle.net/2115/27557. 
  18. ^ オオスズメバチの「警報フェロモン」の成分を突き止めた、小野正人、MATSUNAGA Waki、環境goo、2010年4月17日閲覧
  19. ^ ススメバチの子(すずめばちのこ)球磨村、熊本県総合博物館ネットワーク、2020年5月10日閲覧
  20. ^ 理化学研究所広報室 (2005-11-07). “スズメバチに学んだスポーツ飲料VAAM”. 理研ニュース 293: 2-4. https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/publications/news/2005/rn200511.pdf. 

関連項目

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オオスズメバチ
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