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ウサギバブル

ウサギバブル(うさぎバブル、: rabbit mania)とは、明治初期に東京府を中心に起こったウサギに対する投機流行のことである。

概要

明治4年(1871年)頃からウサギの流行が始まり、明治5年(1872年)頃には東京の富裕層を中心に外来種カイウサギが珍重され、愛玩用としての飼育品種改良のための交配が行われるようになった。そして、それを買い求める人の増加によりウサギの価格が高騰し、投機目的での飼育や奸商の登場に繋がった。明治6年(1873年)に流行のピークを迎えるが、その後、ウサギの飼育・売買を制限するために兎集会の禁止や兎税の導入が行われ、明治13年(1880年)頃には流行が衰退した。

沿革

明治4年(1871年)から始まったウサギの流行は、明治5年(1872年)の春頃に外国種の耳長兎へ人気が集まったことにより本格化していく[1][2][3]。そして、「兎会」と称して待合茶屋などにウサギを持ち寄り、ウサギの値段や毛色を争うようになる[1][3][4]。後に交配により、黒毛の斑紋を持った白兎「更紗兎」が生まれ、種付用雄兎が200 - 600円、種付料が2 - 3円という値段で取引が行われるようになる[1]

明治5年(1872年)7月、大阪府から兎売買の市立・集会の禁止に関する布令が出される[5]

明治6年(1873年)1月18日、東京府から兎会を禁止する下記の布令が出される[6][7]

東京府達 六年一月十八日 第四號[8]
一 近來兎會ト唱ヘ所々ニ於テ多人數集會無謂格別ノ高價ヲ以賣買候趣相聞右ハ心得違破産ノ本ニ付自今集會致シ候者有之候ハヽ屹度爲相止可申候此旨相達候事

明治6年(1873年)12月7日、東京府から区々戸長に向けて、ウサギの売買をする者は区扱所に届け出をすること、ウサギ1羽につき毎月1円の税金を納めること、無届けの場合にはウサギ1羽につき2円の過怠金を徴収すること等を定めた下記の兎取締の布達が出される[9][10][11]

東京府達 六年十二月七月 第百四十四號市在區區戸長[12]
當春以來兎賣買之儀ニ付テハ度々告諭イタシ置候處未相止左之上稅申付ル間區區無洩所持人名取調月月二十五日限リ集金可相納此旨相達候事
一 兎賣買候者ハ雙方ヨリ其區扱所ヘ增減可屆出事
一 區區扱所ニ於テハ姓名無遺漏記載イタシオキ月月稅金可取立事
一 兎一羽ニ付月月金一圓ツツ可相納事
一 無屆ニテ所持候者有之節ハ一羽ニ付金二圓過怠可申付事
一 多人數集會競賣候儀ハ是迄之通一切不相成候事
右之通可相心得候事
東京府屆 六年十二月七日
兎賣買ノ儀ニ付テハ當春以來度度告諭相達置候未今日ニ至リ候テモ賣買不相止哉ニ相聞終ニハ家業衰微ノ基トモ可相成懸念候ニ付警保寮ヘ協議及ヒ候處高稅ヲ以相制候ハヽ自然畜養不相增方ト見込候間別紙ノ通布達取計申候尤稅金ノ儀ハ先般被設候府下養育院費用ニ充テ候樣可致ト存候此段御屆申上候也

上記の布達が出されたことにより、ウサギの価格は暴落し、布達に従って納税する者の他、ウサギを殺処分したり川に流したりする者、床下に隠す者、東京以外の者に売る者が出てくる[9][13][14]

明治9年(1876年)4月27日、東京府は、兎税を含む東京府の風俗に関する各種税金の収納期限の変更及び徴税当局を区扱所から区務所に変更する改正を行う[15]

東京府布達 九年四月二十七日 甲第十三號[16]
府稅各種之内稅金收納方期限區區ニ有之候ニ付自今左之通改正候條此旨布達候事
第一條 (略)
第二條 (略)
第三條 寄席楊弓場劇場茶屋待合茶屋藝妓兎稅ハ月月區務所ヘ取纒メ翌月三日限リ府廳ヘ上納之事
第四條 (略)
第五條 (略)
第六條 (略)

同年5月9日、明治6年(1873年)の兎取締の布達を下記の内容に改正する布達が出され、5月15日に施行される[12][17][18]

東京府布達 九年五月九日 甲第二十五號[19][20][21][22]
明治六年第百四十四號ヲ以テ兎取締之儀相達置候處今般左ノ通改正本月十五日ヨリ施行候條此旨布達候事
第一條 兎畜養ノ者ハ頭數增減ノ節三日ヲ限リ區務所ヘ可屆出事
第二條 兎畜養之者ハ府稅トシテ一頭ニ付月五日限リ金一圓宛可相納事
第三條 兎賣買又ハ一時寄托スルモノ共雙方ヨリ三日限リ區務所ヘ可屆出事
第四條 第一條第三條ノ手數ヲ怠ルモノハ隱畜ト爲シ其兎取上ケ尚當初ヨリノ府稅ヲ追徴シ一頭ニ付過怠金二圓宛可取立事
第五條 兎隱畜ノ者アルヲ告ル者ハ過怠金ノ半ヲ給スヘキ事
第六條 兎賣買ニ付多人數集會競賣買ニ類スル所業不相成事
第七條 兎賣買所ヲ設ケ招牌等ヲ掲ル儀一切不相成事

この改正では、税額などに変わりはないが、隠れてウサギを畜養した場合には、2円の過怠金の徴収に加えて隠匿期間分の税額の追徴及びウサギの没収を課し、更に密告者には過怠金の半額を給付することとして、改正前の府達より厳しい内容とした[17]。このように罰則を厳しくし、相互監視体制を築いたことにより、ウサギの飼育や売買をする者が減少する[17]

明治12年(1879年)6月4日、営業税雑種税賦課規則を布達した際に、6月30日を以て兎税等の府税を廃止する下記の布達が出される[19][23][24]

東京府布達 十二年六月四日 甲第六十號[25]
本廳甲第五十七號布達ヲ以テ營業稅雜種稅賦課規則相定候ニ付テハ府稅徴收諸規則ノ儀ハ本月三十日限相廢候條此旨布達候事

これにより、再びウサギの飼育や売買をする者が増えて再流行の兆しを見せるが[23][26]、明治13年(1880年)2 - 3月頃にはウサギの飼育や売買も衰退していった[27]

ウサギバブルの後

畜産としてのウサギの需要は伸びており、家畜としてのウサギ飼育の為の指南書が複数出版された。これにより、ウサギ飼育の為のコストやキャピタル・ゲインが予測できるようになり、これに見合った投資が行われるようになった[28]

その他

東京地方税理士会のイメージキャラクター「トッチーくん」は、兎税にちなみ、ウサギをモチーフにデザインされている[29][30]

出典

  1. ^ a b c 赤田 1997, p. 269.
  2. ^ 白山 2012, p. 369.
  3. ^ a b 高嶋 2013, p. 232.
  4. ^ 牧原 1990, p. 133.
  5. ^ 赤田 1997, pp. 267–268.
  6. ^ 赤田 1997, pp. 269–270.
  7. ^ 高嶋 2013, p. 239.
  8. ^ 「兎会ト唱ヘ多人数集会売買スルヲ禁ス」『法規分類大全』 第26 刑法門、内閣記録局、1891年5月12日、540頁。NDLJP:994198/284 
  9. ^ a b 牧原 1990, p. 134.
  10. ^ 赤田 1997, pp. 281–282.
  11. ^ 高嶋 2013, p. 243.
  12. ^ a b 「東京府兎税ヲ徴ス」『法規分類大全』 第42 租税門、内閣記録局、1891年2月26日、226-227頁。NDLJP:994214/126 
  13. ^ 赤田 1997, p. 283.
  14. ^ 國枝 2016, p. 38.
  15. ^ 赤田 1997, pp. 290–291.
  16. ^ 「東京府税収納期限改正」『法規分類大全』 第42 租税門、内閣記録局、1891年2月26日、232-233頁。NDLJP:994214/129 
  17. ^ a b c 赤田 1997, p. 291.
  18. ^ 高嶋 2013, p. 246.
  19. ^ a b 「東京府兎税ヲ徴ス」『法規分類大全』 第42 租税門、内閣記録局、1891年2月26日、233頁。NDLJP:994214/129 
  20. ^ 「兎取締規則罰例ヲ改ム」『法規分類大全』 第27 刑法門、内閣記録局、1891年7月31日、325頁。NDLJP:994199/189 
  21. ^ 「東京府兎隠畜者ヲ告ル者ハ過怠金ヲ以テ賞与ス」『法規分類大全』 第20 賞恤門、内閣記録局、1890年6月14日、572頁。NDLJP:994192/312 
  22. ^ 「官令」『読売新聞』第386号1876年5月11日、1面。
  23. ^ a b 赤田 1997, p. 292.
  24. ^ 高嶋 2013, p. 247.
  25. ^ 「東京府税収納期限改正」『法規分類大全』 第42 租税門、内閣記録局、1891年2月26日、480頁。NDLJP:994214/253 
  26. ^ 高嶋 2013, p. 248.
  27. ^ 赤田 1997, p. 293.
  28. ^ 國枝 2016, p. 42.
  29. ^ 税務の味方トッチーくん”. 東京地方税理士会. 2021年2月26日閲覧。
  30. ^ トッチーくんが誕生、東京地方税理士会イメージキャラクター」『神奈川新聞』2012年10月31日。2021年2月26日閲覧。

参考文献

  • 牧原憲夫『明治七年の大論争』日本経済評論社、1990年8月20日。ISBN 9784818804333NCID BN05245237 
  • 赤田光男『ウサギの日本文化史』世界思想社、1997年3月20日。ISBN 9784790706458NCID BN16145096 
  • 白山映子「明治初期の兎投機―「開化物」とメディアから見えてくるもの」『東京大学大学院教育学研究科紀要』第51巻、東京大学大学院教育学研究科、2012年3月10日、363-375頁、doi:10.15083/00031135NAID 40019229862 
  • 高嶋修一「明治の兎バブル」『青山経済論集』第64巻第4号、青山学院大学経済学会、2013年3月30日、231-251頁、doi:10.34321/13049NAID 110009646822 
  • 國枝繁樹 著「第2章 バブルと税制:再考」、証券税制研究会 編『リスクと税制』日本証券経済研究所、2016年11月30日、25-44頁。ISBN 9784890320523NCID BB22686802http://www.jsri.or.jp/publish/general/pdf/g24/02.pdf 

関連項目

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